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1. チャレンジングデータ

1.2 BAS の感度均一性と校正の効果


 RLG における感度の面均一性
 約15年前, RLGは薬物動態研究者に大きな期待をもって迎えられ,薬物動態学会でもメインテーマとして取り上げられた.また,「ラジオルミノグラフィー研究会」が十数年に渡って開催されてきた.しかし,RLGは放射能定量法としての市民権を得ていない.その所以は次の3つに要約されると思われる.RLGは2次元カウンターであるにもかかわらず,感度均一性を校正しないまま使われている.PSLを,放射能のSI単位であるBqに転換するという最も基本的なことが等閑にされている.ユーザー側でのバリデーションがなされないまま使われている.
 RLG において感度均一性を左右するのはBAS のPSL読取り感度における不均一性,IPの劣化による応答感度均一性の低下と RI汚染及び遮蔽強度むらによる BG の不均一性の3つである.Brand-new IP の応答感度均一性は高いが,劣化によって均一性が低下している恐れがある.BAS のPSL読取り感度やBG における不均一性は避けられない.
 BASにおいて,PSLの読取りは縦(IPの短い方向,メインスキャン)と横(サブスキャン)の2方向に渡って行われる.それぞれの地点における感度は両スキャンの感度によって決まる.例えば,それぞれのスキャンにおける±1%(普通なら許容範囲)の差が四隅のうち.対角線上にある2隅では互いに打ち消し合って±0%になり,他の2隅では互いに強調し合って±2%になる.すなわち,最高と最低では4%もの差が出るということである.
 本図は,Pm-147 平面線源に露光した4枚の IP について周辺部10 mm をカットし, 684 エリア(10×10mm)のPSL/mm2 を指標にして均一性と校正の効果を検討した図である.
 AはPSLob/mm2(校正前)の分布である.PSLob/mm2に少数とはいえ,異常に高いエリアが存在することは2次元放射能測定法としては致命的な欠陥である.その1.52 %というRSDからは“均一性は十分に高い”ように錯覚しがちであるが,正規分布しないPSLob/mm2に標準偏差を適用することは間違いである.
 Bは3枚の Pm-147 平面線源露光IPの平均値を使いエリアレベルで,C,Dは1枚のPm-147 平面線源露光IP を使い,それぞれエリアレベル及びピクセルレベルで校正して得られたPSLnor/mm2の分布である.いずれの校正によってもBAS のPSL読取り感度における均一性は,IP全面にわたって著しく改善され,PSLnor/mm2は正規分布するようになる.RSDがいずれも0.5%前後であることは,校正によってRLGは精度の極めて高い2次元放射能測定法になることを示唆している.
 わずかではあるが,異常値を示すエリアがあることを念頭においておるべきである.感度不均一性は周辺部で特に顕著に現れるので,感度校正しない場合には周辺部(40 mm)は使用しない方が安全である.
 校正作業に必要なのは,Pm-147平面線源ではなく,この線源に露光されたIPであることを強調しておく.後者は,放射性物質ではないので,放射線障害防止法の規制を受けることなく輸送できる.輸送はこの試験に対してなんの障害にならないことは経験済みである.わが国に1か所のβ線均一照射設備を作れば,わが国の全BASを定期的に校正することができる.詳細は,3. ラジオルミノグラフィーによる放射能の定量測定を参照されたい.

   
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