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1. チャレンジングデータ

1.1 極低量C-14 投与実験を可能にする高感度放射能測定法


 低バック液シンやラジオルミノグラフィーは C-14 の検出限界を1桁も向上させ,薬物動態の研究に新時代を開こうとしている.この図は,極低レベル C-14に対する検量線を示したものである.これら2つの技術は,極低レベル (例えば1μCi)C-14標識薬物投与実験において有効な放射能の検出手段となる.
 欧米では古くから,10μCi のC-14標識体を投与し,普通の液シン(BG30cpm)を用い,10分計数で吸収排泄を見る試験(従来法)が行われてきた.低レベル放射能の測定精度はBG値と計数時間の1/2乗に比例して向上する.極めて簡潔な結論は,1μCi のC-14標識体を投与し,低バック液シン(BG3cpm)を用い,100分計数すれば,従来法と同じ精度で吸収排泄を追跡できるということである.
 わが国では放射能に対するアレルギーが異常に高い.生物学的半減期12時間のC-14標識薬物1μCi の服用に伴う内部被爆は約 8μSv と推定される.高度12000mを飛行するジェット機に乗っていると4μSv/hr被爆する(国際航空路線の乗務員組合の調査),体重 60 kgのヒトには 49 nCi ,一日に摂取する食物には 1.1 nCi の C-14 が含まれている.自然からの被爆線量は1年間につき1mSvと報告されている(1988年の国連科学委員会).これらの事情を考慮すると, 1μCi の C-14 の服用に伴う放射線障害は杞憂に過ぎない. 筆者は,日本でもC-14標識薬物投与実験ができる日が一日も早く来ることを願っている.
詳細は,3.ラジオルミノグラフィーによる放射能の定量測定, 5.極低レベル C-14 標識薬物投与実験を参照されたい.

   
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