RLGlogo2

3. ラジオルミノグラフィーによる放射能の定量測定

3.2 BAS の感度均一性の校正

 BAS の感度校正
 RLG における感度には IP の応答感度と BAS の感度が関係しており,実際には両者が重なった状態でしか観察されない.したがって,この両者が感度の不均一性にどのように係わっているかを明らかにしなければならない.Pm-147 平面線源(9)に露光された 4 枚の未使用 IP を2 台のBAS で解析し,PSLob を統計的に検討した結果,RLG における感度不均一性の主因は BAS における PSL読取り過程にあること,また不均一性の現れ方は再現性が高いことが分かった(10).このことは,β線を均一照射した IP を使って BAS の感度不均一性を校正できることを示唆している.
 まず,感度校正の可能性を実証した.4 枚の未使用 IP を別々にPm-147平面線源に露光した.これらのIP(Pm-147露光 IP)に任意に1-4 の番号をつけ,そのうちの1 枚(Pm-147露光 IP-4) の PSLobを Pm-147 露光 IP-1-3 の PSLob で校正した.周辺部 10 mm をカットし,10×10 mm の 684 エリアには左上を1,下へ2,3,4,..18,折り返して上へ19,20,..684 と便宜上番号を付した.また,IP の縦,横の中心線及び 2 本の対角線上に等間隔に,5 個ずつ設定した100 mm2 のエリアを設定し,左上のエリアを指定エリア 1,時計方向に 2,3,4 ・・・17(中心点)の番号をつけた.各エリアの PSLob から式 7 を用いて,感度校正されたPSL 値(PSLnor)を算出した.話を単純にするためにエリアレベルでの校正について述べたが,校正は画素子レベルでも行った.
f7 式7
 校正作業に必要なのは,Pm-147平面線源ではなく,Pm-147露光IPであることを強調しておく.後者は,放射性物質ではないので,放射線障害防止法の規制を受けることなく輸送できる.カセット内に収納されて輸送されるIPで予想されるPSLbgの上昇(2 PSL/mm2/24 hr前後)及びfadingの影響は均一である.したがって,Pm-147露光IPの宅急便による輸送はこの試験に対してなんの障害にもならない.
 IPの応答感度の均一性を支配する因子は軟β線と硬β線(X線)では異なる.前者ではIPの保護膜の厚みの均一性が,後者では感光層の厚みの均一性が決定的である.今回,C-14を前提にし,軟β放射体であるPm-147の平面線源を採用した.X線を均一照射したIPでBASの感度が相互に校正できることが明らかになれば,X線照射法でも目的を達成できる.この場合,X線源とIPの距離を十分にとらなければならない.X線源からの距離と照射線量の間には逆二乗の法則が成立する.例えば,1,2.3,5 mの距離にあるX線源からIPを照射した場合,IPの中心点の照射線量を1とすると,四隅のそれはそれぞれ0.952,0.988,0.994,0.998 になる.

 感度均一性の向上
 感度校正の有効性を検証した例をFig. 2に挙げた.図中A は,Pm-147露光 IP-4 の PSLob/mm2の分布である.B 及 C はそれぞれ 3 枚及び1 枚のPm-147露光 IP からエリアレベルで校正して求めたIP-4 の PSLnor/mm2 の分布である. D は,1 枚のPm-147露光IP から画素子レベルで求めたIP-4 の PSLnor/mm2 の分布である.

fig2

Fig. 2 Variances of PSL/mm2 before and after normalization

 

 PSLob/mm2 の分布の RSD は全体としては1.52 % に過ぎず,校正不要な精度と錯覚される恐れがある.しかしながら,少数とはいえ PSLob/mm2 の異常に高いエリアと低いエリア(両者の比は1.12)が存在することは重大問題である.この実験結果は,RLG で放射能を定量するときには BAS の感度校正が必須であることを示唆している.また,PSLob/mm2 は正規分布でないので,そもそも標準偏差という考え方を適用すること自身が誤りである.これに対して,いずれの校正によってもPSLnor/mm2 は典型的な正規分布になることは注目すべきことである.
 Pm-147β粒子のエネルギーは C-14 β粒子のそれと同じレベルである.前述したように,1 個の C-14 β粒子は平均で 0.02 PSL を与えると推定される.したがって, PSLnor/mm2 の平均値が160 PSL 前後であることは,この露光条件下では1 エリア当たり約 800000個のPm-147β粒子が入射していることを意味している.その統計変動の RSD は0.11 % である.3 枚の Pm-147 露光 IP の平均値を使って校正した(RSD 0.46 %, B)方が1 枚の Pm-147 露光 IP を使った場合(0.55 %,0.56 %)よりも RSD が幾分小さくなっている.これは,3 枚のPm-147露光 IP の平均値を使うことによって入射Pm-147β粒子数の統計変動が更に小さくなったためと説明される.1 枚のPm-147露光 IPによっても十分な精度で校正できることを強調しておく.PSLnor/mm2 に見られる RSD の大部分は BAS の PSL 読取りにおける偶然誤差 によるものであるが,校正処理によって IP 全面にわたって 0.5 % 前後の RSD で測定できることは,RLG が極めて精度の高い 2 次元放射能測定法になりうることを示唆している.
 エリアレベル(C)及び画素子レベル(D)で校正して求めたPSLnor/mm2 の RSD がほぼ一致した値を示すことは,画素子レベルでも同じ精度で校正できること,すなわち,提案した方法は TLC や WBA 切片のように ROI が不定形の場合にも適用できることを意味している.

 感度の方向変動性の改善
 感度の方向変動性を,Pm-147露光 IP-4 における指定17 エリアの相対感度を調べることにより検討し,実験結果を Fig.3 に示した(10).この図において黒丸はIP-4のPSLob/mm2の方向変動性を示している.白丸は3枚のPm-147露光 IPを用いてエリアレベルで,白三角は1枚のPm-147露光 IPを用いてピクセルレベルで校正したPm-147露光 IP-4のPSLnor/mm2の方向変動性を示している.黒ダイヤはPm-147平面線源を180度回転して露光した場合のIP-4のPSLob/mm2の方向変動性を示している.縦軸は全エリアの平均値を1とした場合の相対感度,横軸は右上の図に示した地点A,B,C,Dからの距離を示している.
  いずれのレベルで校正しても相対感度の方向変動性は認められなくなった.この図から,異常に高い PSLob/mm2 を示すエリアは指定エリア 1(及びその周辺),若干低いPSLob/mm2 を示すエリアは指定エリア 5(及びその周辺)に対応することが分かった.なお,平面線源を180゜回転して露光しても同じ方向変動性が現れることからこれらのエリアの異常値は平面線源によるものではないことが確認された.Fig. 3 において,縦(主走査)及び横(副走査)それぞれの中心線に沿っての相対感度(A,B)には余り大きな変動は見られない,一方の対角線(C)に沿って極めて顕著な変動が見られるが,他の対角線(D)に沿って変動はほとんど見られないことは注目すべきことである.これは,C では縦・横の変動が互いに強められたのに対して D では相殺されていることによると説明される.
 RLGが開発された当時,製薬企業及びADME受託研究機関から構成された検討会がそのバリデーションの一環として,C-14平面線源を回送し,これに露光したIPのPSLobを中心線に沿って縦・横 2 方向から評価していたが,この方法では精確は結論が得られない.

fig3

Fig. 3 Directional fluctuation in β-ray sensitivity before and after normalization

 

 感度における方向変動性は,検討した他の2台の BAS にも認められた.感度の方向変動性の現れ方は各 BAS 固有である.明確な校正効果が認められることは,感度の方向変動性には日内変動は存在しないことを意味している.しかしながら,月という期間でみると感度の方向変動性は微妙に変化してくる(10).したがって,感度校正は定期的に行なうとともに,感度校正が正常に機能していることを日常的に確認(ユーザー側バリデーション)しなければならない.

 測定精度の向上
 感度校正の測定精度に及ぼす効果を検証するために,Pm-147 露光IP-4 で得られた指定17 エリアの PSL/mm2 を校正前後で比較し,検討結果 Table 1にまとめた.指定17 エリアを周辺部の 8エリアと内部の 9 エリアに分けて考察する.全指定17 エリアの PSLob/mm2 の RSD は 2.24 %,PSLnor/mm2 のそれは 0.60-0.71 % である.周辺部 8 エリアのPSLob/mm2 の RSD(3.16 %)は内部 9 エリアのそれ(0.99 %)よりもはるかに大きい.これは,周辺部のエリアの方が感度不均一性の影響を受けやすいことを示唆している.校正によって周辺部のエリアも RSD が顕著(0.81-0.84 %)に改善されることが分かった.また,内部のエリアにも校正の効果が認められることは,内部にも弱いながらも感度不均一性が存在することを示唆している.

Table 1 Comparison of PSL/mm2 of the 17 specified areas on an IP irradiated with a Pm-147 planar radiation source before and after normalization

Areas PSLob PSLnor
1* 2** 3***
Periheral 9 areas
Mean 160.92±5.09 160.03±1.29 160.23±1.32 161.11±1.36
(RSD %) (3.16) (0.81) (0.82) (0.84)
Inner 8 areas
Mean 159.78±1.58 160.51±0.72 160,48±1.02 161.22±1.01
(RSD %) (0.99) (0.45) (0.64) (0.63)
Over all areas
Mean 160.32±3.59 160.30±0.96 160.30±1.06 161.17±1.15
(RSD %) (2.24) (0.60) (0.66) (0.71)

*: Normalized with the relative sensitivity of the corresponding area on the three Pm-147 irradiated IPs. **:Normalized with the relative sensitivity of the corresponding area on one of the three Pm-147 irradiated IPs. ***: Normalized in pixel level using one of the three Pm-147 irradiated IPs.

章の目次へ 次へ
 Home 略字表