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14. 原発事故放射能汚染処理に関する2つの重大な誤り

はじめに

 原発事故に伴う放射能による環境汚染に対して現在とられている対応には2つの重大な誤りがある.
 第一の誤りは,汚染核種としてセシウム-137 (Cs-137)のみが騒がれているが,ストロンチウム-90(Sr-90)をより注意深く監視しなければならないことである.Sr-90は,骨に集まり,骨髄を照射して白血病を誘発する恐れのあることから,最も危険視されてきた核種で,放射線障害防止法が制定された時点では,Cs-137 より1桁低い値から法規制の対象になっていた,これら2つの核種のウラン-235からの核分裂収率(約 6 %)及び半減期(約 30 年)はいずれもほぼ同じであるので,存在場所を問わなければ,現時点ではこれら2つはほぼ同量存在しているはずである.また,β線は透過力が弱く,紙1枚で簡単に遮蔽できるというのも問題である.Sr-90のβ壊変によって生成するイットリウム-90(Y-90)は極めて高いエネルギーの,すなわち透過力の大きいβ線を放出するからである.更に,土壌との親和性はストロンチウムの方がより高いので,Sr-90はより長期間にわたって滞留すると考えられる.したがって,Cs-137のみを放射能汚染の指標にしていると,“早まった安全宣言”を出す恐れがある.

 第二の誤りは,放射能の除染作業の展望が全く立っていないことである.放射能の除染とは“放射能で汚染されたものを集め,容積を小さく(減容)し,法令で定める限度になるまで減衰することを待つ(保管廃棄)ことである”.保管期間は一般に当該核種の半減期の10倍とされている.保管廃棄は,リン-32,ヨウ素-131のように短半減期の核種や注射針のように嵩低いものに対しては有効な方法であるが,現在問題になっている汚染物に保管廃棄を適用することは非現実的である.最も有効な減容化は焼却処理である.放射性廃棄物集中処理施設を新設し,焼却処理をしようとする計画が水面下で進められているが,“原発事故放射性廃棄物を燃焼するとCs-137やSr-90が放出される”,“飲料水が放射能で汚染される“という,非科学的なデマに惑わされて,当該施設を受け入れてくれる自治体が現れる可能性は皆無である.筆者は,ここに現実的な方式を提案する,まず,このデマを科学的に否定し,地区住民の了解を得た上で,原発事故放射性廃棄物を地区別で燃焼処理し,嵩低くする.特に高レベルのロットは原発で,その他は各自治体で保管廃棄する方式である.

1. 放射能汚染の問題を考えるために必要な放射化学
 セシウム-137
 ストロンチウム-90

2. β線のエネルギー(透過力)の差を利用する Sr-90,Y-90,Cs-137の分別定量
 β線の吸収曲線

3. 可燃性廃棄物は各自治体で燃焼処理を
 提案する方法の骨子
 まずは関係者のコンセンサスを
 各自治体における可燃性廃棄物の燃焼
 Sr-90の汚染マップ

あとがき


   
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