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1. チャレンジングデータ

1.4 初めて可能になった,定量全身オートラジオグラフィー

 

Experimental result of a quantitative WBA

 

 今年(2004年) は,Ullbergが全身オートラジオグラフィー(WBA)を発表してから50年目に当たる節目の年である.
 WBAで放射線センサーとして用いられてきたX線フィルムは定量性に欠ける,ダイナミックレンジが狭いなどの理由で,定量には臓器摘出-液シンによる計数,より直感的な観察や微細な分布状態の解明にはWBAが相補的に使われてきた.
 1990年代早々,定量性により優れ,ダイナミックレンジも広いラジオルミノグラフィー(RLG)が開発されるに及んで, WBAのRLGによる定量化が製薬企業の間で共通の目的になったが,切片臓器の厚み(mg/cm2)を測定する課題が解決されなかったのでWBAによる定量はお預けになっていた.
 筆者は,Pm-147平面線源によるラジオグラフィーでWBA切片各臓器の厚みを求め,自己吸収を補正してWBA切片各臓器のC-14を絶対測定する方法を開発した.本表はその一例である.ラットに0.6 M Bq C-14 sucroseをiv投与し,2分後に犠牲にし,30μm,60μm(3枚),90μm のWBA切片を作成し,検討した結果を肝臓についてまとめたものである.
 Pm-147は,WBA切片臓器の厚み(風袋を含めて10 mg/cm2前後)を測定するには最も適したエネルギーのβ線を放射する放射性同位体である.従来のWBAで求められるnet PSL/mm2(step 1)は切片厚みに比例しない.これは,切片が厚くなるにつれて自己吸収が大きくなるからである.Pm-147平面線源によるラジオグラフィーで求めた切片の厚みmg/cm2(step 2)で自己吸収を補正し,Bq/cm2を求めた(step 3).最後に燃焼して液シンでBq/cm2を求めた(step 4).step 3と4の値はよく一致した.
 例えば,60μm切片における自己吸収率は0.85(testis)から0.60(white fat)まで大きく変動する.すなわち,自己吸収は液シンにおけるクエンチングなみの影響を及ぼしている.したがって,自己吸収を補正しない従来のWBAでは定量的な議論はできない.今後,各自の手法で作成したWBA切片各臓器の1mm当たりのmg/cm2値をあらかじめ求めておき,これによって自己吸収を補正するようにすれば,だれでも各臓器の放射能をBq単位で表示できる.
 詳細は6.定量全身オートラジオグラフィーで解説する.

   
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