RLGlogo2

6 定量全身オートラジオグラフィー 

はじめに

 ここに,野口,長谷川,北川3氏が編集された「アイソトープによる薬物代謝実験」(1971年,南江堂)がある.本書には,麻生氏の薬物代謝研究への期待,横島氏の標識薬物の調製,筆者の薬物代謝研究例とともに松岡,南保,進藤,佐藤氏など,わが国で全身オートラジオグラフィー(以下,画像を含めてWBA)の開発に携わった先駆者の寄稿がある.すなわち,WBAは,RIが薬物動態研究に使われ始めた頃に開発された伝統ある技術である.しかし,X線フィルムでは定量性に欠ける,ダイナミックレンジが狭いなどの理由でWBAは定性目的でしか使われなかった.それ以降約20年間,定量には臓器摘出-LSCによる計数,より直感的な観察や微細な分布状態の解明にはWBAが相補的に使われてきた.
 1990年代早々, IPを2次元放射線センサーとし, IP上に記録された放射線エネルギーの分布情報をBASでPSL画像として取り出す, RLGが開発された.RLGの定量性は高くダイナミックレンジも広いことから,RLG によるWBAの定量化が製薬企業の間で共通の目的になった.第一化学の長塚,三共の田中,中島,生体科研の重松の各氏が中心になり,わが国主要製薬企業と研究機関21社が参加して大掛かりで精力的な共同研究が実施され,“RLGによるWBAは摘出臓器計数法に替わりうる方法である”と言う結論が得られたと報告されたが(1),WBAにおける最大のネック,切片臓器の厚み(mg/cm2)を測定して自己吸収率(Fs.ab)を補正する課題が未解決であった.
 筆者は,Pm-147平面線源でWBA切片各臓器の厚みを求め(2),Fs.abを補正してWBA切片各臓器のC-14を絶対測定する方法を開発した(3).ここでは,現時点で実施可能な定量WBAを提案したい


章の目次へ 次へ
Homeへ 略字表