RLGlogo2

3. ラジオルミノグラフィーによる放射能の定量測定

はじめに

 ラジオルミノグラフィー(RLG)は放射能の2次元分布画像の解析手段としては不動の地位を確立した.放射能の測定精度は測定時間の 1/2 乗に比例して向上する.したがって,従来の計数操作に相当する露光を桁違いに長くできるRLGでは高い測定精度が期待できるが,RLG は放射能定量測定法としての市民権を得ていないように思われる.その所以として,感度の均一性を試験し,不均一性が認められた場合には校正するという 2 次元放射能測定法としてのキーポイントが未解決のままであること,また自己吸収,測定値の統計変動,光輝尽発光 photo-stimulated luminescence (PSL) 値の Bq 値への変換など,最も基礎的な事項が等閑にされたままであること,更にはユーザー側でのバリデーション法が確立されていないことなどが挙げられる.
 アイソトープ協会のアイソトープトレーサー研究用機器専門委員会は RLG の基礎から応用にわたる解説をラジオアイソトープ誌に連載(1998 年11 月号から2001年4月号)してきた.著者はその1つとして「RLG の放射能定量測定法としての体系化」を寄稿した.今回,薬物動態研究に関連する事項をこれに加筆して本稿をまとめた.
 有限長さの光学系で IP 全面にわたって均一感度で PSL を読取ることや IP 全面を均一強度で遮蔽することは無理な話である.β線を均一照射した IP を使い,BAS の感度を校正することによって IP 全面にわたって感度均一性を著しく向上させることができる.また,校正によってBG PSL 値は正規分布になり,検出限界を統計的に論ずることができる.
 BAS や IP が初期の精度をいつまでも保持していると考えるのは間違いである.ユーザーは,BAS が正常に機能していることを日常的に確認し,IP の放射能汚染,応答感度の均一性を定期的にモニターする方法を提案する.
 本章は,薬物動態研究の立場からRLGのバリデーションを目指して実施し,薬物動態学会会誌に発表した一連の研究を総括したものである.

章の目次へ 次へ
 Home 略字表