RLGlogo2

4. マイクロプレートラジオルミノグラフィーとその Radio HPLC への応用

4.4 Q and A

Q 4.1 マイクロプレート RLG 法の検出限界はどのくらいか?
Q 4.2 測定済みマイクロプレートの処理は?
Q 4.3 マイクロプレート RLG ではどのくらいの検出効率で計測しているか?
Q 4.4 自己吸収に対する対策は?
Q 4.5 1 Bq の C-14 を 24 時間露光した場合,何個くらいのβ粒子が IP の感光面に到達していることになるか?
Q 4.6 Radio HPLC のオフライン計数における分画時間を設定する基準は?
Q 4.7 マイクロプレート RLG でオフライン計数した場合の検出限界はどのくらいか?
Q 4.8 もっと Fg の高いマイクロプレートはできないか?

Q 4.1 マイクロプレート RLG 法の検出限界はどのくらいか?
A 4.1 マイクロプレートRLG の検出限界は,測定試料のFs.ab,露光時間,露光時の遮蔽強度,BAS の感度及び BG の均一性などいろいろな因子によって左右される.BG の統計変動が小さいほど検出感度は高くなる.開発初期の段階では,BAS の感度及び BG の均一性に対する考慮をしないで実験していた.とりあえず,自己吸収が無視できる試料で,24 時間,10 mm 真鍮箱内露光で 50 mBq, LSC で10 分計数相当という値を公表してきた.その後,BAS の感度均一性の実体,BG 値の統計変動が明らかになり,より具体的に検出限界を提示することができるようになった.例えば,72 時間,20 mm 真鍮箱内で露光した場合の PSLnor.bg は 317.5±5.9 PSL/100 mm2 である.LSC の BG は 30 cpm 前後であるので,この PSLnor.bg は LSC に置き換えると,30±0.6 cpm で BG を測定していることになり,これだけの精度を達成するためには100 分計数しなければならない.理想的には,位置依存性を校正した状態で RLG を行うことである.IP 周辺部の BG 及び BAS の感度の均一性は悪い.したがって,事情が許せば,周辺部 40 mm を除外して露光した方が良い.

Q 4.2 測定済みマイクロプレートの処理は?
A 4.2 添付してあるシールで密閉し,冷蔵庫に保管しておく.嵩張らないので保管は容易であり,必要に応じて再測定できる.最終的にはアイソトープ協会に可燃廃棄物として引き取ってもらう.

Q 4.3 マイクロプレート RLG ではどのくらいの検出効率で計測しているか?
A 4.3 本法における検出効率 F を決めるのはFg,Fs.ab,及びウエル内の空気層,汚染防止のためにマイクロプレートを包むルミラー膜及び IP の感光層を保護している保護膜などによる吸収率(Fab)の 3 つである.Fg はウエル底面が IP の感光面を望む立体角で 0.135 である.Fab と Fg は全てのウエルに共通な値になる.Fs.ab については次問で答える.

Q 4.4 自己吸収に対する対策は?
A 4.4  C-14 β線は自己吸収を強く受ける.LSC でクエンチングを補正しているように,RLG では常に Fs.ab に対する配慮が必要である.試料厚み(mg/cm2)が同じ一連の試料は,試料厚みを同じにした標準試料と比較測定する(外部標準法).試料ごとに厚みが異なっている可能性がある場合には,試料を 2 系列作成し,一方に既知量の C-14 を添加して RLG を行い,PSL の増加量から算出する(内部標準法).

Q 4.5 1 Bq の C-14 を 24 時間露光した場合,何個くらいのβ粒子が IP の感光面に到達していることになるか?
A 4.5 自己吸収ゼロ(Fs.ab=1.00)として考える.ウエル底と IP の感光面の間には空気層,汚染防止のために覆ったルミラー膜,IP の保護膜が存在する.これらの合計量は 2.5 mg/cm2(C-14 β線の半減の厚みに相当,すなわち Fab=0.5)に達する.現在使われているマイクロプレートの Fg は 0.135 であるので F は 0.067 になり,求めるβ粒子数は約 5800 ということになる.このβ粒子数の統計変動の RSD は 1.3 % で,これは 1 Bq の C-14 を LSC で 100 分測定した場合の計数の統計変動とほぼ同じである.

Q 4.6 Radio HPLC のオフライン計数における分画時間を設定する基準は?
A 4.6 分画時間の設定は頭を悩ませることである.分画時間が長すぎると,カラムで分離されたものが混ざり合ってしまい,クロマトグラムとはいえないヒストグラムになる.また,あまり短すぎると,個々の分画の放射能が低くなるので統計変動が大きくなり,その結果どこがピークトップかはっきりしないチャートになる.分画時間は,最もシャープなピークが 3 分画にまたがって溶離してくるような時間に設定するのが良く,それ以上細かく分画しても分離能の向上はあまり期待できないといわれている.ピーク幅は,保持時間が長くなるにつれて広がる.代謝パターン分析の段階では基質について HPLC 条件がいろいろ検討されているはずであるから,基質が 3 分画にわたって溶離するような時間に設定したら良い.

Q 4.7 マイクロプレート RLG でオフライン計数した場合の検出限界はどのくらいか?
A 4.7 マイクロプレート RLG に限らずクロマトグラフにおける検出限界はいろいろな要因によって変動し,どうしても主観が入りやすい.結局,検出限界に関係する全条件と生データを提示し,第三者も検出限界の妥当性の論議に参加できるようにしなければならない.マイクロプレート RLG でオフライン計数した場合の検出限界は,ピーク幅(sec)と分画時間,露光条件(遮蔽強度と露光時間)などの情報が必要である. テキストでは,条件ができるだけ同じになるようにして,本法,LSC によるオフライン計数及びオンライン計数を比較した例を挙げた.本法によれば,注入量 0.35 Bq でも定量できた.本法では各分画を LSC で10 分間ずつ計数した精度をあげていることを考慮すれば,これは決して誇張したデータではない.RLGにおける感度均一性を配慮し,露光条件(遮蔽の強化と露光時間の延伸)を改善して実施すれば検出限界は0.1 Bq前後と期待される.

Q 4.8 もっと Fg の高いマイクロプレートはできないか?
A 4.8 マイクロプレートにおける Fg はウエルの半径と深さによって決まる.現在流通している RLG 用マイクロプレート(48 穴サイズ,ウエルの r=5.7 mm,h=5.0)の Fg は0.14 である.例えば,r=8.0 mm(24 穴サイズ),h=3.0 mm にすれば,Fg は0.25 になる.このマイクロプレートでは,一度に露光できる試料数は半減するが,Fg が約 2 倍になり,(試料量が同じなら)自己吸収による損失は小さくなり,その結果 F は二重に大きくなるので生体試料などの測定に有利である.要望があれば供給したいと考えている.

   
章の目次へ 次へ
Home 略字表